ジーンズの少年十字軍 [本の紹介]

少し前に『少年十字軍』という本を紹介しました。

今回は、岩波少年文庫の『ジーンズの少年十字軍 上・下』(テア・ベックマン)を紹介したいと思います。

前回紹介した皆川博子『少年十字軍』は、エティエンヌの少年十字軍のお話になっていますが、今回の作品は、ドイツの少年ニコラースが率いた十字軍のお話です。

とはいえ、物語は現代(20世紀後半)に暮らす少年のドルフがタイムマシーンで少年十字軍の時代に吹っ飛んでしまうところから始まります(『タイムライン』という映画があるが、それっぽい)。そこでドルフは学生のフィボナッチ(フィボナッチ数列の人)に出会い、さらに少年たちの十字軍に出会い、それに参加していきます。

少年十字軍は、飢え、病気、大人の悪しき思惑など様々な苦難に直面します。ドルフは、現代の知識などを生かして、それらの危機を乗り越えようと努力します。彼らは乗り越えていけるのでしょうか?行けたならば、旅の果てに何が待っているのでしょうか?

とにかく大変な旅です。彼らにとっては悪魔にも等しい感染症、周囲の不振と無理解、人数は多いのに食べ物はわずか(マルサスか)、おまけにドルフのあまりに現代的な物言いに「異端」の疑いがかかる。

ともすると、中世ヨーロッパは暗黒時代とされてしまいがちです。この作品では、たしかにドルフの現代の知識は人々を救うものとなっています。しかし、ドルフは、中世の人々の心性や生き方に驚きと感嘆のような情を抱いてもいます。

神とともにある中世でありますが、単純に今より劣っているというものでもないし、かといって優れているというものでもないというように読めます。それぞれの時代に、それぞれの形で優れた人もいれば、悪しき人もいる、もしくはそれぞれの側面を持っている。歴史や時代を多面的にとらえるという点でも参考になる物語です。

むろん、ストーリーの引き込みも抜群です。私は、上巻を読み終えてのち、仕事が終わってすぐに本屋さんへ「遠征」に行ってしまったほどです。一つ一つの苦難の克服はもちろん、最終的に彼らを待っているのは何なのか、大人である修道士の正体は何なのか、という大きな興味も我々を引っ張っていきます。特に上巻の後半から下巻の中盤くらいまでが抜群です。

ちなみに、シチリアのフェデリーコ2世(フリードリヒ2世)が、名前だけですが、登場します。




ジーンズの少年十字軍〈上〉 (岩波少年文庫)

ジーンズの少年十字軍〈上〉 (岩波少年文庫)

  • 作者: テア ベックマン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2007/11/16
  • メディア: 単行本





ジーンズの少年十字軍〈下〉 (岩波少年文庫)

ジーンズの少年十字軍〈下〉 (岩波少年文庫)

  • 作者: テア ベックマン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2007/11/16
  • メディア: 単行本



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