コモン・センス [本の紹介]

本日は、トマス=ペインの『コモン・センス』(岩波文庫)をご紹介したいと思います。

わたしは、毎回、アメリカ独立戦争の授業を作るときに、ある本の言葉をタイトルに用いています。それが実は『コモン・センス』なのです。

アメリカは、イギリスに対して独立戦争を挑みます。これが有名なアメリカ独立戦争です。教科書ではさらっと書かれていますが、当初は、独立を目指すのが多数派の見解では、必ずしもありませんでした。イギリスの国王についておこうとする人々も、中立を保とうとする人々も、それぞれ少なからずいました。

しかし、のちには多くの人々が独立派に傾いていきます。もちろん、いくつかの要因があるのでしょうが、それらのうちの有力な1つが『コモン・センス』の発表です。当時の社会契約や自然法思想さらには聖書を踏まえて独立という常識を筋道立てて描きつつ、そこかしこに情熱がほとばしっているというたぐいまれな書物です。

まず、イギリス政府の欠陥、なかんずく、王制に関する批判が展開される。「王がやっているのは、国民を貧乏に追いやったり、仲たがいさせたりすることなのだ」と最後にはバッサリ王政を切り捨てている(1)。

続いて、イギリスの植民地であり続けることの問題点、独立することの可能性、それも今すぐに行える、行うべきという説得、などが述べられています。暴政を見逃して独立を尻込みするなら、それは倫理的な罪であるというような観点や、のちになればなるほど軍隊が弱くさせられてしまうから、早く独立するほうがかえって可能性が高いという冷静な観点など、いろいろな観点から独立=常識(コモンセンス)ということが示されます。

歴史を動かした本、という言い方があるが、間違いなくそのうちの一冊に入る本である。

「おお、人類を愛する諸君。暴政ばかりか暴君に対しても決然と反抗する諸君、決起せよ。旧世界のいたるところが圧政に踏みにじられている。自由は地球上から追い立てられている。アジアやアフリカははるか以前に自由を追放した。ヨーロッパは自由を他人のように考え、イギリスは自由に立ち去るように勧告した。おお!亡命者を受け入れよ。そして他たちに人類のために避難所を設けよ」(2)。次の授業のタイトルは「人類を愛する諸君、決起せよ」にしてみようか?


(1)トマス=ペイン(小松春雄訳)『コモン・センス』岩波書店、1976、41ページ。

(2)前掲書、68ページ。


コモン・センス 他三篇 (岩波文庫 白 106-1)

コモン・センス 他三篇 (岩波文庫 白 106-1)

  • 作者: トーマス ペイン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/03/16
  • メディア: 文庫



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