オリヴィエ=べカイユの死 [本の紹介]

本日は、エミール=ゾラの『オリヴィエ・べカイユの死』(光文社古典新訳文庫)をご紹介いたします。

ゾラというと、ドレフュス事件への抗議や『居酒屋』『ナナ』といった長編の大作が教科書には出てきます。自然主義ということも出てきます。これらのことから「厚いなぁ」「難しそう?」「超大人向け?」など敬遠していた方も多いのでは。私もそうでした・・・。

しかし、今回の『オリヴィエ・ベカイユの死』は、短編集であり、「意識はあるが肉体が動かず、周囲に死んだと思われた男」という紹介分が面白そうだったので、読んでみることにしました。

そうしたら、少なくとも堅苦しそうなイメージは払しょくされ、楽しい読書のひと時を味わうことができました。

少し収録策に触れておきたいと思います。

「オリヴィエ・ベカイユの死」
意識はある、だが体は動かぬ。周りの人は死んだと思っている。そんな彼から見た周囲の人間の様子が描かれている。

「呪われた家」
ある売り家には、親に殺された少女の幽霊と、彼女を呼ぶ声が響き渡っていると。「私」はその家の秘密を探ってみます。この作品は、最後まで読まないとだめですよ。

「スルディス夫人」
個人的には印象が最も強く、圧巻だと思う。ある売れない画家がいたのだが、彼は、妻となる人の経済的支援を受け、画家として大成功する。そのご、妻が絵の手伝いをするようになるのだが、そのことによって二人の関係性、絵のありかたが変化していく。芸術のありかたやアイデンティティの問題など、様々な要素をはらみつつ、何より超自然的なものはないが、どこではまり込んだのかすらわからないような不思議なはなしとなっている。

基本的にどの作品も、ゾラに関する知識が全くなくても(私もそうです)楽しく読める作品となっています。ミステリー的、ショートショート的なテイストの作品たちです。結末は・・・?

ゾラに限りませんが、短編から入ってみるのは一つのよい読書方法です。あまり教科書には取り上げられておりませんが、多くの作家には長編だけでなく、名短編があります。そこにチャレンジしてみるのも、よいと思います。





オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家 ゾラ傑作短篇集 (光文社古典新訳文庫)

オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家 ゾラ傑作短篇集 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ゾラ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/06/11
  • メディア: 文庫



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