それを食べてはいけない [地理人]

地理の授業の下調べをしていて、面白いウェブページを見つけた。

国土交通省のウェブページで「多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアル」というウェブページである。このページには、それぞれの宗教で食べてはいけないものや、いろいろな国と日本とのテーブルマナーの違いなどを紹介している(1)。

イスラームでアルコールが禁止されていること、豚肉が禁止されていること、ヒンドゥー教で牛肉が禁止されていることなどは一般に有名であるが、それ以外にも多くのことが紹介されていた。たとえば、イスラームに関しては、肉の正しい処理方法や、豚肉そのものだけでなく、豚を料理した調理器具やゼラチンなども禁忌であることなどが書かれている。ヒンドゥー教に関しても、有名な牛肉の禁忌だけでなく、刺激の強いたまねぎなども好ましくないことが書かれている。ユダヤ教についても言及がしっかりされていた。

テーブルマナーについては、食器を持ち上げるかどうかや、手を伸ばして調味料を取ってよい蚊などについて書かれていた。

こういった物事に関して、「なぜそういった禁忌があるのか?」などを考えたり、調べてみたりするのも面白い。宗教上のものに関しては、多くの場合、聖典に言及がある。

たとえば『旧約聖書 レビ記』には以下のような記述がある。

・・・すなわち、獣のうち、ひづめが分かれていてそのひづめが裂け目をなし、しかも反すうするすべての生き物、それがあなた方の食べてもよいものである。(2)


このようなことから、ウサギや馬を食すことは禁止されている。

『コーラン』は以下のように言う。

汝らが食べてはならぬものは、死獣の肉、血、豚肉、それから邪神にささげられたもの、絞め殺された動物・・・(3)


有名な、豚肉を禁ずる規定はここにある。さらに、イスラームの正しい動物の処理方法もこれに基づいている。

さらに、聖典はどうしてそういったものを禁じているのか、というテーマも興味深い。豚肉に関しては、感染症や寄生虫症が起こりやすかったから禁止されたともいわれているが、どうなのだろうか?


(1)http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/sangyou/taiou_manual.html
(2)『聖書』「レビ記 」11:2、(新世界訳)、1982年、177ページ。
(3)『コーラン』(井筒俊彦 訳)、岩波文庫、1957年、144ページ。



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コメント 2

富士山(*^ω^*)


授業でやりましたあ( ..)!
復習になりますw

イスラームで豚肉が禁止になっているのは
感染症などの為とも言われ
しかし牛肉が禁止になっているのは
尊いからですよね?

コーランにはアッラーとよく出てくるww
by 富士山(*^ω^*) (2012-06-05 18:03) 

morning-trap-ice

富士山(*^ω^*) 様へ

再書き込みありがとうございます。
ヒンドゥー教で牛を食べてはいけないのは、そのとおり、牛は神聖な動物だからです。

かつて、バラモン教は牛殺しの儀式を行っていた。ガウタマ=シッダールタはそれを批判した。バラモン教が昇華されたヒンドゥー教では牛を殺すなどもってのほかとなっている。他方、日本では牛肉を食べている。このあたりはとても興味深い。

なお、ヒンドゥー教では、べジタリアニズムの立場をとることが多い。

イスラーム文化圏は書の文化圏だが、厚い本の中に、アッラーをたたえる言葉がたくさんちりばめられている。後でならうが『世界史序説』にはしばしば「神は正しいことへの導き手である」というようなフレーズが出てくる。そうでなくても厚い本だけれども。

by morning-trap-ice (2012-06-05 19:02) 

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