80日間世界一周 [地理人]

1998年センター試験地理B本試験になかなかユニークな問題があった。ジュール=ヴェルヌという作家の『八十日間世界一周』(1873)という作品を題材にして出題するというものである(1)。

地図でその作品で通ったルートを示し、そのとちゅうで見られる光景や、通った都市の特徴などについて問うていた。無論、作品を読んだことがなくても十分解ける。しかし、この作品をテーマにして地理を考えようという着想はなかなか面白い。

実は、この作品を原作とした映画がある。1つ目はその名も『八十日間世界一周』という映画である。1950年代の映画で、いまから50年以上前となっている。地理の観点から見てもなかなか見所がある。たとえば、スペインで闘牛をした主人公たちが、インドでもその調子で牛を扱うというシーンがある。その後どうなるかはご想像のとおりである。その他、日本人がやたらとお辞儀しているようなシーンには、当時の日本観が現れていて面白い。

無論、各地の景色も見ることが出来る。世界史でも地理でもそうなのだが、その時代や国や地域のイメージがもてるようになると強い。そんなイメージ形成にも役立つ作品である。

ちょうど時代が産業革命が進展した頃なので、鉄道が使われている。また、船についても中国とヨーロッパの船がしっかりと作り分けられているなど、世界史の観点から見ても興味深い。

もうひとつ、「リメイク」バージョンの『80デイズ』というのもある。こちらは世界一周をしながら、各地でアクションを繰り広げるというもので、より娯楽色が強くなっている。ライト兄弟がおかしな登場をしていたりと、フィクション味も強い。まあ、都市の(ステレオタイプ的な)特徴はよく出ているし、印象派の隆盛や植民地支配の話など、世界史的な話題も登場している。

世界史的に見ると、トルコが結構面白い。オスマン帝国の時代なのだが、トルコには浴場が多いことや、トルコがヨーロッパの文化を積極的に取り入れたこと、一夫多妻制についてなどのテーマが入っている。

映画で学び、学んだ知識で映画をより深く味わう、そんなのもいいものである。

今日のホームワーク:トルコにはなぜ浴場が多いのか?理由をひとつ考えましょう。


(1)ヴェルヌは19世紀のSF(サイエンス・フィクション:空想科学小説)作家。気球や宇宙旅行などを予言したかのような作品を残している。『月世界へ行く』『十五少年漂流記』などが有名。


八十日間世界一周 (創元SF文庫)

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  • 作者: ジュール・ヴェルヌ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1976/03
  • メディア: 文庫




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morning-trap-ice

トルコは、かつてローマの支配下にあり、しかも都のコンスタンティノープル(いまのイスタンブル)があった場所である。そのため、ローマの温泉文化の影響が強いというのが1点。

もう1点は、イスラームでは礼拝の前に体を清める必要があるから、温泉が多く作られたというもの。このようなことが考えられる。
by morning-trap-ice (2012-06-04 22:11) 

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